東京大学にいて何がいいかって、医学・科学の世界で最先端なことをやっている先生や、「世界初」を勝ち取ってきた先生がたくさんいる。もちろんその中には、すでにお亡くなりになられている「偉人」と呼ばれるような先生方もいる。
例えば、ひたすらうさぎの耳にコールタールを塗り込み、化学物質がガンを引き起こすことを世界で初めて証明した山極勝三郎先生がいたり。。。つい2年前にオートファジーの仕組みの発見でノーベル生理学・医学賞を受賞された、大隅先生も東京大学出身。
でもそれ以上に、さまざまなLecturersの講義を聞けるのが利点だと思う。
東京大学の教授はもちろんのこと、他大学の教授や、研究所の研究者も講義をしてくださる。
その中で、先日聞いた顕微鏡に関する講義がとてもおもしろく、印象に残ったので少し書いてみようと思う。
今は、ミクロではなくナノの世界をみれている
よくミクロの世界は~なんてフレーズをNHKや、医学・人体に関するドキュメンタリーで耳にする。
私たちの肉眼では見ることのできない不思議な世界が、「ミクロの世界」では広がっている。
顕微鏡が初めて作られたのは1590年台と言われている。
今だったら常識だが、400年以上も前に、目で見えないものをガラスのレンズを2つ重ねることによって大きく映し出し、
見えるようにすると考えた人がいると思うと、どんな頭脳をしていたのだろうと思う。
その後、1660年台に、Robert Hookeというイギリスの自然哲学者が、初めてコルクを顕微鏡下でみて、
Cell(細胞)と呼んだ。細胞がミクロの世界を代表とすると考えれば、ミクロの世界は350年前から見えていたのだ。
だが、時代は代わり、ミクロの世界が見えるのは当たり前になった。
ITテクノロジーの進歩とともに、医療・研究機器の技術もものすごい速さで進歩している。
この進化により、今は「ナノの世界」が見れるようになっている。
「ナノ」が見えるということは、細胞、、、ではなく、細胞の中にある細胞小器官がかなりの解像度で見えるということだ。
化学、生物、物理が合わさってこそ見れる、ナノの世界
まず、ナノの世界を見るのに必要なものは3つある。
見るもの(生物):例えば、細胞の中のトランスポーター・プロテインや、ミトコンドリア等
顕微鏡(物理):小さいものをよりきれいに、正確に映し出す超解像顕微鏡や、画像を解析するパソコンなど
プローブ(化学):小さいものを見るためにそれに色を付ける染色など
ナノの世界を見るには、質の良い顕微鏡だけがあっても無理だ。
まずは見るものがなければいけない。
そして、見るものを最適な染色方法で染めなければただの透明のモノとしてなにも見えない。
よって、ナノの世界とは、化学、生物、物理がいい具合に混じり合ってこそ見れる世界なのだ。
正直、これは当たり前なのだが、聞いた時にへぇ~と驚いた。
そしてより精度が高く、小さいものをきれいに見るためには、これらの3つの要素がきちんと合わさらないと見れない。
どうやって見るではなく、なにを見るのがカギ
見る方法は、様々な顕微鏡や、染色方法などでたくさんある。だが、何を見るかが一番のカギだそうだ(ま~そう言われれば、そうだな~と納得してしまうが)。
「なにをみるか」という目的があってこそ、そのモノを見るために一番適した顕微鏡や、染色方法(=手段)が決まってくる。目的がなければ、手段を考えることもできない。
もちろん技術に関しても、面白い話を聞いたし、現在どこまで技術が進歩しているかも聞いた。だが、やっぱりいちばん印象に残ったのは、「なにを見るかがカギ」というメッセージだった。
目的がなければ、道筋も見えない。これは人生においてもアプライできるのでは?と思いながら授業を終えた。
私も10年後、20年後、50年後みたい世界・自分を考えて、どういった手段をとればたどり着けるか考えなければ。